喉頭・音声グループ Laryngeal disease and Voice Disorder Group
チーフ:上羽瑠美
メンバー:後藤多嘉緒、佐藤拓、小山美咲
喉頭・気道関連の疾患として、喉頭良性腫瘍(乳頭腫、血管腫など)、早期喉頭悪性腫瘍、気道狭窄(急性炎症、喉頭外傷、両側声帯麻痺など)、喉頭奇形などの診療をしています。小児の先天性喉頭奇形への治療や気道評価も行っています。腫瘍性病変に対しては、経口的切除やレーザー治療を行っています。気道狭窄に対しては、病状に応じて気管切開術や喉頭・気管形成術を行っています。両側声帯運動障害に対しては、声門開大術(内視鏡下披裂軟骨切除術やEjnell法)を行っています。
音声関連の疾患として、声帯ポリープや声帯萎縮、声帯麻痺(反回神経麻痺)などによる音声障害の診療も行います。保存的治療で治癒しない声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯などには、喉頭微細手術を行います。加齢や声帯麻痺による声帯萎縮へは、コラーゲンや自家脂肪による声帯内注入術を、また、声帯瘢痕に対するトリアムシノロンアセトニドやbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)の声帯内注射も行っています。声帯麻痺に対する外科的治療には、声帯内注入術、甲状軟骨形成術I型、 披裂軟骨内転術などから病態や患者様の希望に応じて選択しています。難治性の痙攣性発声障害に対して、甲状軟骨形成術II型や甲状披裂筋切除術、ボツリヌストキシン注射も行うことができます。
音声グループでの診療では、声帯麻痺や声帯萎縮など音声疾患の診断や外科的治療による効果について、高速度撮影システムを用いて、解析を行っています。他にも、喉頭筋電図検査を行い、声帯運動障害例に対する解析などを行っています。
・高速度撮影システムによる若年健常者の声帯振動
・喉頭筋電図検査
・HSDI(ハイスピードデジタルカメラ)での音声評価例
嚥下障害グループ Swallowing Disorder Group
チーフ:上羽瑠美
メンバー:後藤多嘉緒、佐藤拓、小山美咲
嚥下障害の治療法として、嚥下訓練(リハビリテーション)と外科的治療がありますが、当科では主に嚥下機能評価と外科的治療、術後のリハビリテーションを言語聴覚士や嚥下認定看護師らと協力して行っています。嚥下機能検査は年間約700症例に行っており、一般的な嚥下機能検査だけでなく、嚥下内圧検査や嚥下CT検査などの特殊な検査もしています。詳しく検査した上で脳卒中や脳外科・頭頸部・食道手術後の嚥下障害に対して、喉頭挙上術や輪状咽頭筋切断術などの嚥下機能改善手術を行っており、胃瘻などの経管栄養から離脱できた症例が増えています。 筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病などの神経筋疾患や脳血管障害により誤嚥性肺炎を反復している症例には、気管切開術のみならず、より確実な誤嚥防止や経口摂取の維持を目的として、声門閉鎖術や喉頭気管分離術、喉頭中央部切除術などの誤嚥防止手術を行っています。誤嚥防止手術は、患者さんの状態や今後の経過を予測してより患者さんにあった術式を選択しています。例えば、声門閉鎖術は局所麻酔下で行っているため、 呼吸機能が低下し、全身麻酔が困難な症例でも施行可能です。
嚥下診療では、外科的治療法の選択や効果判定、神経筋疾患の嚥下障害の病態について、嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査、高解像度嚥下内圧検査を用いて、解析を行っています。さらに国内でも数か所でしか行っていない嚥下CT検査による4D画像(立体的動画)で嚥下動態を検証しています。検査結果や患者さんの状態を総合的に判断して、嚥下機能改善手術や誤嚥防止手術の適応や術式を決定します。
・嚥下造影検査
・嚥下内視鏡検査
・高解像度嚥下内圧検査
嚥下研究チーム Swallowing Research Team
チーフ:上羽瑠美
メンバー:後藤多嘉緒、佐藤拓、小山美咲
嚥下にかかわる多くの研究を行っています。臨床研究では、口腔咽頭形態変化や機能低下による嚥下障害のメカニズムを、320 列面検出器型CT(320-ADCT)による4次元(3次元嚥下動態)検査と高解像度内圧計による口腔咽頭内圧検査を用いて、構造評価と機能評価という両側面より検証しています。食道癌や頭頸部癌による嚥下障害や神経筋疾患の嚥下障害に関する嚥下障害についても研究テーマであり、他にも多くの共同研究を行っています。
また、嚥下と食品は切ってもきれない関係ですが、当チームでは大学病院としては珍しく、各種粘度計やテクスチャーアナライザーを用いた食品科学的検証も行っています。
基礎研究にも力を入れており、University of California Davisと共同で造影剤誤嚥による肺障害の機序の検証や骨格筋や細胞外マトリックスの分化誘導による嚥下障害予防と治療法の開発にも取り組んでいます。
臨床研究
- 多列面検出器型CTと高解像度嚥下内圧計による嚥下障害機序と食品テクスチャー適性の解明
- 多系統萎縮症における嚥下障害と声帯運動障害、食道機能障害に関する研究
- 食道癌術後の嚥下障害とリスクに関する前向き研究(共同研究)
- 頭頸部癌患者における高解像度嚥下内圧計を使用した化学放射線療法後の嚥下圧変化に関する探索的研究(多施設共同研究)
- Virtual reality(VR)による嚥下障害に関する教育応用
- 誤嚥防止手術による術後効果の検証
- 肺移植患者における嚥下障害及び食道運動障害に関する研究
- 強皮症患者における嚥下障害及び食道運動障害に関する研究
・多系統萎縮症における嚥下圧の異常
・嚥下CTによる解析
・嚥下運動のVR化(工学部:小椋貴文,AIC八重洲クリニック:吉田諭史)
嚥下運動を4次元的に理解する方法として、VR化を推進しています。嚥下CTの画像情報をVR化し、ヘッドセットを装着して「嚥下の世界を実体験」することにより、複雑な嚥下動態を体感できるようなシステムを構築しました。これは世界初の試みです。
食品科学的研究
- 嚥下障害の病態に応じた適切なとろみに関する検討
- 増粘多糖類とゲル化剤による食品テクスチャーへの影響の検証と嚥下食への活用
- アルコールに対する増粘多糖類とゲル化剤による食品テクスチャーへの影響の検証
- アイスクリームの食品物性の経時的変化の検証と嚥下障害患者への活用
・食品テクスチャー測定
基礎研究
- 造影剤誤嚥による急性・慢性気道組織障害の組織学的・分子生物学的機序の解明(国際共同研究)
- 骨格筋と細胞外マトリックスの分化誘導による嚥下障害予防と治療法の開発
・バリウムによる肺障害:組織的解析
・バリウムによる肺障害の機序
喉頭基礎研究チーム Laryngeal Basal Research Team
チーフ:上羽瑠美
メンバー:後藤多嘉緒、佐藤拓、小山美咲
喉頭の基礎研究では、主にラットを用いて病的モデルを作成し、以下の研究テーマを中心に研究を行っています。喫煙により喉頭分泌が増えること、禁煙により一時的に喉頭分泌が増えるものの、ステロイドの治療により改善することなどを発見しました。禁煙後の喉頭分泌の一時的増加に関してこれまで基礎的なデータはなく、我々が初めて報告しました。さらに、声帯の筋再生に向けた基礎的研究も行っており、臨床応用の準備を進めています。
- 喫煙による喉頭への影響及び禁煙効果の検証
- 喫煙性声帯炎症に対する声帯内トリアムシノロンアセトニド注入の効果に関する検証
- 喉頭における神経原性炎症ネットワークの解明
- bFGFの声帯麻痺に伴う筋萎縮予防・筋再生に対する臨床応用にむけた基礎的研究
- 患者由来腫瘍を用いた難治性再発性喉頭乳頭腫の遺伝子発現解析による病態解明
・タバコ煙溶液による喉頭分泌への影響と炎症性サイトカイン
・bFGFによる筋再生効果
東大医学部音声言語医学研究施設(1965~1997)年報
https://www.umin.ac.jp/memorial/rilp-tokyo/
音声言語医学研究施設は、東大耳鼻咽喉科の関連施設でした。
上記リンクには、貴重な研究内容がまとめられています。ご自由にご覧ください。