東大耳鼻科は「安全・安心・思いやりの医療」「先進の技術開発」「専門医研修の充実」を高いレベルで実現することを目指しています。

研究トピックス

当教室の研究関連のニュースをお伝えします。

2018年

10月

  • 日本耳科学会で受賞

 2018年10月3日〜6日に行われた第28回日本耳科学会 総会・学術講演会において、当教室の浦中医師がポスター賞を受賞しました。

第28回日本耳科学会ポスター賞
演題名:CT画像による鼓室内の鼓索神経の走行パターンの解析
演者:浦中司、松本有、星雄二郎、樫尾明憲、岩﨑真一、山岨達也

 

7月

  • カドヘリン11は中耳の正常発達に不可欠

 カドヘリンファミリーに属するタンパク質カドヘリン11(Cad11)は、多くの神経・脳部位に発現する細胞接着分子です。今回我々はCad11遺伝子の改変マウス(Cad11-/-マウス)を解析しました。Cad11-/-マウスは中等度難聴を示し、組織解析では中耳内容積の減少と中耳の含気化の遅れ(中耳発達の遅れ)が認められました。したがってCad11は中耳の正常発達に不可欠な分子であると推定され、このマウスはこれまで詳細が不明であった中耳奇形に伴う伝音性難聴の原因解明のための有望な手がかりとなると考えられます。

The adhesion molecule cadherin 11 is essential for acquisition of normal hearing ability through middle ear development in the mouse.
Kiyama Y, Kikkawa YS, Kinoshita M, Matsumoto Y, Kondo K, Fujimoto C, Iwasaki S, Yamasoba T, Manabe T.
Lab Invest. 2018 Jul 2. [Epub ahead of print]

  • 微弱な電気刺激による動的バランスの改善

 微弱な前庭電気刺激(ノイズGVS)が、高齢者や両側前庭障害患者の立位時のバランス改善に有効であることを報告してきましたが、今回は、このノイズGVSが、健常者および両側前庭障害患者の歩行のスピードを上げる効果もあることが明らかになりました。これは、ノイズGVSが、静的バランスだけでなく、動的バランスの改善にも有効であることを示す結果といえます。

Noisy vestibular stimulation increases gait speed in normals and in bilateral vestibulopathy.
Iwasaki S, Fujimoto C, Egami N, Kinoshita M, Togo F, Yamamoto Y, Yamasoba T.
Brain Stimul. 2018 Jul – Aug;11(4):709-715.

 

6月

  • 仮想モデルをもちいた気流解析による嗅覚最適化

 CT画像をもとに3次元モデルを構築し、Computational Fluid Dynamicsを用いて嗅裂の気流を可視化し、気導性嗅覚障害に関する検討を行いました。
 Virtual polypを作成した検討では、嗅裂前方および後方の気流路が嗅裂気流に重要であることが明らかになりました。さらに仮想鼻内副鼻腔手術による研究では、上鼻道の開放すると術後の嗅裂気流が増加することがわかりました。
 これらの検討により、嗅裂気流の確保には嗅裂の前後の開口の状態が重要であり、鼻内内視鏡手術の篩骨洞開放の際には上鼻道を十分開放すること、つまり吸気における嗅裂気流の出口、呼気における入口を十分確保することが術後の嗅覚改善に寄与する可能性が示唆されました。この研究は2017年のISIAN 1st awardを受賞しました。

Influence of the location of nasal polyps on olfactory airflow and olfaction.
Nishijima H, Kondo K, Yamamoto T, Nomura T, Kikuta S, Shimizu Y, Mizushima Y, Yamasoba T.
Int Forum Allergy Rhinol. 2018 Jun;8(6):695-706.

Ethmoidectomy combined with superior meatus enlargement increases olfactory airflow.
Nishijima H, Kondo K, Nomura T, Yamasoba T.
Laryngoscope Investig Otolaryngol. 2017 Feb 10;2(4):136-146.

  • 喫煙による嗅覚障害のメカニズム

 喫煙による嗅覚障害のメカニズムとして,タバコ煙が嗅神経上皮中の嗅覚前駆細胞にダメージを与え, 成熟嗅神経細胞数が減少し、嗅覚障害が生じることを報告してきました。今回は、加齢モデルでのタバコ煙による影響を検証し,加齢モデルではタバコ煙によりアポトーシス細胞が増えやすく、もともとの高炎症性サイトカイン状態も加わり嗅覚障害が生じることを示しました。さらに禁煙後も嗅神経細胞数が回復せず嗅覚障害が持続することがわかり、高齢者喫煙者の嗅覚障害は直りにくいことがわかりました。抗炎症治療やアポトーシス抑制剤が加齢での喫煙性嗅覚障害の治療として応用できる可能性があります。

Cigarette Smoke-Induced Cell Death Causes Persistent Olfactory Dysfunction in Aged Mice.
Ueha R, Ueha S, Kondo K, Kikuta S, Yamasoba T.
Front Aging Neurosci. 2018 Jun 13;10:183.

 

5月

  • 高齢者で嗅覚が低下する背景

 高齢者では嗅覚が低下しますが、嗅覚受容に重要な役割をする嗅神経細胞の数の低下が原因と考えられています。我々はその背景に、嗅神経細胞のもととなる嗅覚前駆細胞の分裂と分化過程の障害と、成熟嗅細胞への分化抑制があることを組織学的に証明しました。さらに網羅的遺伝子解析により,高炎症性サイトカイン・低成長因子(IGF-1)環境、および細胞外マトリックス(ECM)の減少が関連することを明らかにしました。今後、抗炎症治療や成長因子補充治療などによる加齢性嗅覚障害への治療の可能性が広がります。

Reduction of Proliferating Olfactory Cells and Low Expression of Extracellular Matrix Genes Are Hallmarks of the Aged Olfactory Mucosa.
Ueha R, Shichino S, Ueha S, Kondo K, Kikuta S, Nishijima H, Matsushima K, Yamasoba T.
Front Aging Neurosci. 2018 Mar 27;10:86.

  • 日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会を開催しました。

第119回 日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会をパシフィコ横浜にて開催しました。

 

2017年

12月

  • Rhinology Research Forum in Asia (RReFA) で受賞

2017/12/14-15に滋賀県大津にて行われたThe 3rd Rhinology Research Forum in Asia (RReFA) 2017にて、当教室の西嶌医師の発表がYoung Investigator Award (1st prize)を獲得しました。

Winner: Hironobu Nishijima
Title: The effects of posterior nasal neurectomy on the pathogenesis of allergic rhinitis in rat.

11月

  • 日本耳科学会で受賞

2017年11月22日〜24日に行われた第27回日本耳科学会 総会・学術講演会において、当教室の竹内医師、吉川医師が受賞しました。

第27回日本耳科学会奨励賞
論文タイトル:先天性真珠腫におけるキヌタ骨・アブミ骨病変
演者:竹内成夫、奥野妙子、吉田亜由、畑裕子

第27回日本耳科学会ポスター賞
演題名:ミトコンドリア蛍光 (mtGFP) マウスを用いた蝸牛有毛細胞内ミトコンドリア動態の検討
演者:吉川弥生、浦田真次、木下淳、山岨達也

 

9月

  • 日本鼻科学会で受賞

2017年9月28日〜30日に行われた第56回日本鼻科学会 総会・学術講演会において、当教室の菊田医師が受賞しました。

第24回日本鼻科学会賞
受賞者:菊田 周
受賞演題:Longer latency of sensory response to intravenous odor injection predicts olfactory neural disorder

  • Rhinology World Congressにおいて一等賞を受賞

2017年9月1-3日に香港にておこなわれたRhinology World Congress, 36th congress of the International Society of Inflammation and Allergy of the Nose (ISIAN) にて、ISIAN Awardの1st prizeを獲得しました。(受賞者:西嶌大宣)

The ISIAN Award the 1st prize.
Winner: Hironobu Nishijima
Title: Influence of the location of nasal polyps on the olfactory airflow and olfaction

 

7月

  • 日本DDS学会において優秀発表賞を受賞

2017年7月6日~7日に開催された第33回日本DDS学会おいて、優秀発表賞を受賞しました。

受賞者:井上雄太  受賞演題:「動的な腫瘍血管透過性(Nano eruption)の制御」

 

5月

  • 学術映画 ”Pathological eye movements as a symptoms of posterior fossa lesions”

埼玉医大名誉教授(平衡神経科)の坂田英治先生から貴重な映像をご寄贈いただきました。”Pathological eye movements as a symptoms of posterior fossa lesions”「後頭蓋窩病変の徴候としての病的眼球運動」です。47分、全編英語ナレーション付きです。ビデオ全編は掲載できませんが、冒頭40秒および内容抜粋画像をこちらに掲載いたします。ご興味のある方は耳鼻咽喉科教授室までご連絡ください。

  • 総会において宿題報告「細胞機能からみた内耳性難聴の病態とその治療」を行いました。

第118回日本耳鼻咽喉科学会通常総会・学術講演会(広島市)にて、2017年5月18日に宿題報告「細胞機能からみた内耳性難聴の病態とその治療」を発表しました。モノグラフ、および、東大耳鼻科10周年記念業績集の残部ありますので、 購入ご希望の方は、お電話でお問い合わせください。くわしくはこちら

  • オートファジーがマウスの聴覚機能に重要であることを解明

聴覚系の感覚細胞である蝸牛有毛細胞は一度障害されると機能的回復は困難であり、細胞の恒常性維持は聴覚機能に非常に重要です。オートファジーは細胞内のタンパク質やオルガネラをまとめて分解するシステムで、恒常的に細胞質成分を入れ替えることで細胞内の品質管理に貢献しています。オートファジーに必須の分子であるautophagy-related 5(Atg5)を有毛細胞にて欠損させ、オートファジーを停止させたマウスを作製したところ、先天性の高度難聴を呈し、聴毛の変性および細胞の脱落を認めました。恒常的オートファジーは聴覚機能および細胞形態の維持に重要であることを証明しました。(Fujimoto et al. Cell Death & Dis. 2017, プレスリリース1, プレスリリース2, 詳細PDF)

 

2月

  • 日本頭頸部外科学会を開催しました。

第27回 日本頭頸部外科学会を京王プラザホテルにて開催しました。

 

2016年

11月

  • 微弱なノイズ電流により、高齢者の体のバランスが持続的に改善する

高齢者の前庭障害による身体のバランスの障害は、現時点で有効な治療法がありません。耳の後ろに装着した電極より微弱なノイズ電流を加える、経皮的ノイズ前庭電気刺激(nGVS)を、高齢な健常者に30分間加えたところ、刺激を停止した後も数時間にわたり身体のバランスが安定化する、という新しい現象をとらえました。この成果は、常に電流の刺激をしなくても身体のバランスが持続的に改善することを示し、nGVSの治療への応用に有効と考えられます。(Fujimoto et al. Sci Rep. 2016, プレスリリース1, プレスリリース2

  • 生きた細胞内のグルタチオンを可視化・定量 ~がん治療研究や創薬研究への応用に期待~

細胞には酸化ストレスへの防御機構として抗酸化物質が存在し、中でも還元型グルタチオン(GSH)が主たる役割を担っています。今回東京大学医学系研究科生体情報学教室(浦野泰照教授)との共同研究で、この細胞内GSH濃度を生細胞においてリアルタイムに定量可能な蛍光プローブを開発しました。このプローブによってがん細胞の酸化ストレス耐性機構の解明などレドックスに関する様々な知見が得られることが期待されます。(Umezawa, Yoshida et al. Nature Chem. 2016, プレスリリース1, プレスリリース2

 

10月

  • 嗅覚の障害部位の推定が可能に

嗅覚障害は、匂い分子が嗅神経に到達しないことによる「伝導性嗅覚障害」と嗅神経自体が障害をうける「神経性嗅覚障害」に分けられます。しかし、この2つの障害を検査によって区別することはできませんでした。東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科との共同研究によって静脈性嗅覚検査での潜時に着目することで神経性嗅覚障害の有無を検出できることを見つけました。今後、嗅覚障害の病態に応じた適切な治療法が選択できるようになり、新規治療法の開発も期待されます。(Kikuta, Matsumoto et al. Sci Rep. 2016, プレスリリース

 

6月

  • アレルギー性鼻炎における神経制御の解析

後鼻神経切断術の動物モデルを作成し、アレルギー性鼻炎における神経制御の解析を行いました。後鼻神経切断術により引き起こされる鼻粘膜の脱神経は、アレ ルギー性鼻炎モデルにおいては、鼻汁量抑制に効果はあるが過敏症状などの免疫反応には効果がないことを明らかにしました。この神経と免疫との関係はアレル ギー性鼻炎の病態解明の手がかりとなるものと考えられます。(Nishijima H, et al. Lab Invest. 2016)

  • 抗加齢医学会を開催しました。

第16回 日本抗加齢医学会総会をパシフィコ横浜にて開催しました。

 

4月

  • 下咽頭癌においてもFAK発現が予後バイオマーカーになりうる

手術を施行した下咽頭癌においてFAK(接着斑キナーゼ)免疫染色の結果、FAK陽性例では陰性例と比較して有意に病理学的リンパ節個数が多く、予後不良で、高率に遠隔転移が出現していた。本研究では、頭頸部癌他部位の既報と同様に下咽頭癌においてもFAK発現が予後バイオマーカーになりうる可能性を示しました。(Omura G, et al. Head Neck. 2016)

 

3月

  • 頭頸部癌に対する超選択的動注化学療法同時放射線治療の安全性を評価

超選択的動注化学療法同時放射線治療の、安全性を評価しました。2010年から2013年までに頭頸部癌に対し化学放射線同時治療をされた8000件のデータから動注群と静注群を同定し、傾向スコアマッチング法を用いて合併症の比較を行いました。治療法を選択する上で有益な情報と考えられます。(Suzuki S, et al. Head Neck. 2016)

  • タバコ煙は、嗅上皮障害後の再生を遅延させる

嗅覚障害の原因の一つであるタバコ煙が,嗅上皮障害後の再生を遅延させることを実証しました。また,タバコ煙による障害嗅上皮再生遅延にはIGF-1の低下が関与していること,IGF-1を投与することでタバコ煙による嗅上皮再生抑制効果がリリースされることを証明しました。(Ueha R, et al. Neurotox Res. 2016)

 

2月

  • ヒト固形腫瘍における新たな「がん抑制遺伝子」を発見

頭頸部癌を含むヒトの固形腫瘍において、新たな「がん抑制遺伝子」を発見しました。この遺伝子はETS転写因子ファ ミリーに属し、これまで造血器腫瘍の「がん遺伝子」として知られていたものですが、固形腫瘍においては逆にがん抑制機能をもつことを証明しました。固形腫瘍と造血器腫瘍における発癌メカニズムの差異の解明や、治療に繋がる可能性が期待されます。(Ando M, et al. Cancer Res. 2016

  • 甲状腺手術における血腫発生の時期及び危険因子

2010年から2014年までに施行された甲状腺手術5万2千件のデータを用いて、血腫発生の時期及び危険因子を明らかにしました。年齢・性・術式・BMI・輸血・抗凝固剤などが術後2日以内の血腫発生と有意な関連があり、また、血腫の20%は術後3日以降に発生していました。甲状腺手術前の情報提供の際に有益なデータと考えられます.(Suzuki S, et al. Medicine. 2016)

  • タバコ煙による嗅覚障害の組織学的なメカニズムを解明

タバコ煙は嗅覚障害の原因の一つとされていましたが、組織学的なメカニズムは未解明でした。我々は初めて、タバコ煙の長期曝露により嗅覚障害が生じること、そのメカニズムとして嗅覚前駆細胞数の低下を伴う成熟嗅細胞の減少が原因であることをマウスモデルで解明しました。(Ueha R, et al. American Journal of Pathology. 2016

  • がんに対するDDS(薬物標的治療)の効率を高める新しい腫瘍血管透過経路を発見!

DDSの効率を高める新しい腫瘍血管透過経路を発見しました。腫瘍血管が不規則に開閉し、そこから蛍光標識した高分子ナノミセルが血管外の腫瘍組織へ漏出するという、極めて動的な現象を発見しました。この現象のメカニズムを解明し活用することができれば、特に難治性腫がんに対する新しい薬物送達法の開発に繋がるものと期待されます。(Matsumoto Yu, et al. Nature Nanotechnology. 2016)   プレスリリース

  • 内リンパ水腫形成へのバゾプレシンの関与を証明

内リンパ嚢閉塞術を行った内リンパ水腫モデル動物にバゾプレシン2型受容体拮抗的阻害薬を投与し、内リンパ水腫が蝸牛及び球形嚢において軽減することを証明しました。内リンパ水腫形成にバゾプレシンが関与している可能性を裏付ける結果であり、メニエール病の新しい治療薬として応用できる可能性が示唆されました。
(Egami N, et al. Hear Res. 2016)

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