論文紹介:人工中耳の開発:歴史的展望と臨床成果

[耳チーム]今回紹介するのは、Active Middle Ear Implantの開発の歴史とそれぞれの特徴を紹介したレビュー論文です。

Active Middle Ear Implantは「人工中耳」とも訳され、中耳を機械的に代償する装置のことです。これまでRion、SOUNDTEC、MAXUM、METおよびVSBが認可され、現在も使用できるのはMAXUM、MET、VSBです。(注:日本はVSBのみ)

Rionは日本で開発された世界初の人工中耳で良好な成績が示されましたが、開発継続が困難となり中止になりました。SOUNDTECも現在開発中止されましたが、その技術を用いたMAXUMは継続しており、特に高音急墜型の難聴で良好なファンクショナルゲインが報告されています。METも良好な装用閾値を示していました。現在はコクレア社が買収、改良してCarinaとなっています。VSBは現在もっとも使用されている人工中耳で、感音難聴のみならず伝音・混合性難聴にも使用されています。

開発初期に比べ現在は安全性および安定性が向上しており、かつ20-40dB程度の良好なファンクショナルゲインが報告されています。今後は騒音下聴取など、さらなる知見の蓄積が期待されます。

The development of active middle ear implants: A historical perspective and clinical outcomes

Kließ MK, Ernst A, Wagner J, Mittmann P

Laryngoscope Investig Otolaryngol. 2018 Oct 6;3(5):394-404.  doi: 10.1002/lio2.215. eCollection 2018 Oct.

PMID: 30410994

投稿者:小山 一/ENT-HP1