耳グループ

チーフ:樫尾明憲

中耳炎・伝音難聴 Otitis Media, Conductive Deafness

外耳道閉鎖症・狭窄症、耳小骨奇形などの先天奇形、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎などの炎症疾患、耳硬化症などの伝音難聴、 過去の根治術後の感染などを扱っています。外耳道閉鎖では形成外科とチームを組み、過去10年で100例以上と日本で最も多い手術経験を誇っています。 鼓膜穿孔の手術は成功率98%です。真珠腫性中耳炎では主に 一期的に乳突洞を充填する術式→を採択し、再発率は2%と極めて優れた成績を持っています。 小児例、進行例には二期的手術を採択しています。 耳硬化症には外耳道内切開のみで操作を行いCOレーザーにより安全にアブミ骨を除去する低侵襲手術を行っています。 頭蓋底に生じた真珠腫。嚢胞・腫瘍などは脳神経外科と協力し、機能を温存しながら病変を郭清する方法を選択しています。

人工内耳 Cochlear Implant

幼小児では小児難聴外来と、成人では難聴外来と協力し、人工内耳の適応を決定します。 人工内耳の手術適応の決定に重要な聴力・補聴効果・発達の評価を行い、またCT・MRIを用いて内耳の状態(奇形・骨化・内耳道狭窄など) を評価します。人工内耳術前には小児例のご両親に対するアンケート調査結果など当科で作成した資料も含め、 人工内耳に関するさまざまな資料を提供します。術後はmappingの調整、聴能訓練(habilitation&rehabilitation)、 定期的な評価を行っています。年間の手術件数は約20件です。 当科の特徴として小児の人工内耳手術例が多いこと、手術困難例が多いことが挙げられます。 小児例が多い理由は当科と密接な連携を持つ難聴児訓練施設が多いことによります。我々は放射線科と協力して精密画像診断を行い、 蝸牛神経や蝸牛欠損例など人工内耳の効果があまり期待できない症例を確実に選別しています。 また高度な内耳奇形や骨化などの手術困難例に対しても全例手術を成功させ、顔面神経麻痺や電極脱落例が皆無であるなど、 極めて高い技術も持っています。これらの実績から難聴児訓練施設と厚い信頼関係を築きあげてきています。

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人工内耳埋め込み手術での電極挿入

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東大病院導入済み 人工内耳2社の比較

内耳研究

感音難聴モデル動物の開発により感音難聴の病態の解析および治療法の開発について、 聴性誘発電位、組織学、組織化学、生化学、分子生物学の手法を駆使して主にin vivoで研究している。
・音響外傷・アミノ配糖体抗菌薬の耳毒性の発症機序の解析および治療法の開発
・老人性難聴の発症機序の解析および予防法の開発
・遺伝性難聴の動物モデルの作成と病態解析
・内耳への新しいDDSの開発(遺伝子導入・蛋白治療・ナノ技術)など

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全身投与で蝸牛内に導入したアポトーシス抑制蛋白質の分布

 

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ミトコンドリア遺伝子変異の蓄積加速による老化マウス

 

内耳再生

支持細胞の増殖誘導・形質転換による有毛細胞の再生を主に研究している。神経賦活因子による蝸牛有毛細胞・ ラセン神経節細胞・蝸牛神経の再生誘導や発達についても研究している。
・蝸牛および前庭感覚上皮の発生
・蝸牛および前庭支持細胞の増殖能
・障害時の蝸牛・前庭支持細胞のMusashi1の発現変化
・p27siRNA遺伝子導入による支持細胞の増殖誘導を介した有毛細胞の再生誘導
・Atoh1遺伝子導入による支持細胞の形質転換による有毛細胞の再生
・内耳由来stem cellの機能解析
・神経賦活因子による蝸牛ラセン神経節細胞・蝸牛神経の再生誘導など

team_r_1Adenovirus vectorによる蝸牛内の遺伝子発現

 

team_r_2p27siRNAによる蝸牛内支持細胞表面の未熟聴毛発現

 

難聴・聴覚 Audiological and Acoustical Science

主に健聴者・難聴患者さん・人工内耳使用者の方を対象として基礎的・臨床的研究を行っています。 研究の対象とする範囲は末梢(内耳)・後迷路はもちろんのこと、中枢処理(認知・両耳融合能など)までカバーしているのが特徴です。

例)
聴覚による時間分解能の検討(ギャップ認識)
脳磁図による日本語音韻処理メカニズムの検討
光トポグラフィーによる聴皮質反応のイメージング
両耳ビート現象等を用いた中枢における両耳融合能の検討
音源定位・音像定位の知覚
人工内耳と補聴器を同時装用しているユーザーにおける両耳融合能
中枢聴覚路に問題がある症例における人工内耳の効果